アスファルトシングル屋根とは？メリット・デメリットを解説
「アスファルトシングル屋根ってどんな屋根？」
「長所短所をしっかり知ってからアスファルトシングルを選びたい」
国内では普及率が低いものの、デザイン性が高く比較的低価格なアスファルトシングルは徐々に認知度が高まりつつあります。
アスファルトシングルはアメリカでは一般的な屋根材で、厚さ数ミリのシートタイプの屋根材です。
本記事では、アスファルトシングルの特徴やメリット・デメリットを具体的に解説します。
アスファルトシングルとは、道路舗装などに用いられるアスファルトをガラス繊維に浸透させコーティングを施した屋根材です。
日本では建築基準法が改正された2007年以降に普及しましたが、アメリカでは住宅用屋根材として一般的に用いられています。
この屋根材の特徴は、着色された鉱物質粒子が表面に吹きつけ加工されている点と薄くシート状である点です。
「シングル」と略されることが多く、アスファルトシングルの屋根を「シングル葺き」とも呼びます。
アスファルトシングル屋根のメリットは下記のとおりです。
・軽量で建物への負担が少ない
・費用を抑えやすい
・防水性に優れている
・デザイン性が高い
それぞれのメリットを具体的に解説します。
アスファルトシングルは厚さが4〜6ミリ程度と薄く軽量のため、建物の構造に負担がかかりにくくなります。
屋根材として一般的なスレートや瓦よりも軽く、平方メートルあたりの重量の目安は下記のとおりです。
・アスファルトシングル：9〜13.2kg
・スレート：17.5〜21kg
・瓦：38.5〜60kg
軽い屋根材は住宅の重心を低くするため、地震の揺れによる影響を受けにくくなります。
アスファルトシングルは構成要素であるアスファルトやガラス繊維、鉱物質粒子の材料費が比較的安く、低価格の屋根材といえます。
また軽量かつ柔軟性のあるシート状の屋根材なので、持ち運びや施工の負担が少なめです。
このため工期や労力が少なく済み、工事費用を抑えやすい傾向にあります。
「導入コストの低い屋根材を選びたい」という方には、アスファルトシングルの選択がおすすめです。
アスファルトシングルは防水シートを仕上げ材に用いており防水性に優れた屋根材です。
構造は、あらゆる屋根の下地材に使われる防水シート「アスファルトルーフィング」と似ています。
一般的に、アスファルトシングルの商品が持つ防水保証は10〜30年程度と長めです。
さらにアスファルトシングル屋根材の下にも下地材の防水シートが設置されるので、二重の防水構造を取ります。
アスファルトシングルは薄いシート状の屋根材のため、さまざまな形状の屋根に合わせて利用できます。
たとえばドーム状であったり一部が湾曲していたりするデザインの屋根にも設置可能です。
また表面に吹きつける砂粒はさまざまな色に着色できるので、自分好みに屋根の色を決められます。
さらにアスファルトシングルはレンガのような温かみのあるデザインなので、住宅を洋風の雰囲気にしたい方にもおすすめです。
軽量かつコストを抑えやすいアスファルトシングル屋根ですが、下記に挙げるデメリットもあります。
・強風に弱い
・表面の石がポロポロと落ちやすい
・断熱性が低い
・施工を依頼できる業者を見つけづらい
それぞれのデメリットを確認していきましょう。
アスファルトシングルは釘と接着用セメントで固定されますが、圧着が緩い箇所から剥がれやすくなります。
特に強風に晒され屋根の勾配に沿って下から上に風が流れた際は、反りや捲れ上がりが起きかねません。
屋根材自体も薄いので、劣化が進行すると破れや千切れにつながるリスクもあります。
風の強い沿岸部などのエリアでは、アスファルトシングルの利用を慎重に検討したほうがよいかもしれません。
アスファルトシングルには、施工後すぐに表面の砂粒がポロポロと落ちるという特徴があります。
この事象は余分に吹き付けられた粒が落ちている場合がほとんどのため、品質上の問題と直結するわけではありません。
しかし場合によっては掃除が必要になったり雨樋が詰まりやすくなったりするため、デメリットともいえます。
なお砂粒の表面ごと剥離し始めた場合、内部のフェルト基材が剥き出しになっているため早急なメンテナンスが必要です。
アスファルトシングル屋根は太陽の熱を吸収しやすく、夏場は室温が高まりやすくなります。
また屋根材の固定に接着用セメントを使用するので、スレートや瓦と比べると空気層ができにくく通気性が低くなりがちです。
屋根材自体が熱を通し内部に湿気がこもるとカビやコケが生じ、劣化が早まります。
立地や環境によっては耐用性が低くなりやすい点も、アスファルトシングルのデメリットです。
アスファルトシングルは取り扱う業者が少ないため、施工を依頼しづらい傾向にあります。
アメリカでは一般的な屋根材ですが、日本では普及率が低いのが現状です。
また対応業者が見つかっても、アスファルトシングルの施工実績が少なく取り扱いに不慣れな可能性はあります。
アスファルトシングル屋根の工事を希望するのであれば、安さだけにとらわれず実績が豊富な業者を選ぶのがおすすめです。
アスファルトシングルの耐用年数は10〜30年程度です。
一昔前の商品は比較的劣化しやすく、寿命が10〜20年程度とされていました。
近年開発された商品は以前よりも品質が向上し、20〜30年程度の耐用年数とされています。
商品の特性はメーカーや原産国によって異なるので、家の立地や気候に見合うものを選びましょう。
なお耐用年数を迎えたり、そうでなくても点検で劣化が見つかったりした場合、屋根の状態に応じた適切な対策が必要です。
アスファルトシングル屋根の劣化が始まると、次の症状が見られます。
・屋根材に剥がれや浮きがある
・屋根材が飛散している
・石粒が剥がれて下地が露出している
具体的な状態を解説するので、自宅の屋根をチェックしてみましょう。
アスファルトシングルは釘と接着剤を使って固定します。
接着力が不足している部分から剥がれてしまいます。
釘で固定されているため、屋根材が脱落することはありません。
しかし、アスファルトシングルは柔らかいため、強い風にあおられるとちぎれてしまうケースも見られます。
下から屋根を見上げ、屋根材が不自然に浮いていないかチェックしましょう。
浮いている状態であれば屋根材が傷んでいるわけではないため、接着剤を補強すれば元に戻ります。
剥がれたり浮いたりしているアスファルトシングルをそのままにしておくと、ちぎれて飛散してしまいます。
台風など、強い風が吹いた後に屋根材が剥がれてしまったケースもあります。
屋根材が飛散すると、その下に敷いてあるルーフィング（防水紙）が露出して劣化が進むため注意しましょう。
アスファルトシングルは、表面に天然砕石や彩色砂を吹き付けてあります。
工事の際に剥がれることを考慮して多めに付けられているため、施工後しばらくは落下しますが、余分な石粒が落ちきれば落下は止まります。
しかし、劣化が進むと石粒が層になって剥がれ落ちてしまうのです。
雨樋に剥がれ落ちた石粒が溜まっている場合もあります。
表面の石粒が剥がれると下地も露出してしまい、屋根の内部に雨水が染みこむようになってしまうため、早急に業者に相談しましょう。
アスファルトシングル屋根で雨漏りが起こった場合、次の原因が考えられます。
・ルーフィングが劣化している
・棟部分に不具合がある
詳細を解説します。
屋根材の下にはルーフィングが敷かれています。
実は屋根材だけでは雨を完全に防ぐことはできず、ルーフィングが雨の浸入を防いでいるのです。
屋根材が剥がれたり、劣化したりすることで、ルーフィングにも被害が及び劣化を早めてしまいます。
ルーフィングが劣化すると、雨水が家の内部に浸入して雨漏りの原因になります。
屋根材が浮いたり、剥がれたりし始めたら、早めに補修してルーフィングの劣化を防ぎましょう。
屋根の山になっている部分は棟と呼ばれます。
屋根で最も高い箇所なので、雨風の影響を受けやすい部位です。
屋根の面と面の境目を保護し、雨の浸入を防ぐ役割があります。
そのため、棟部分が浮いたり剥がれたりすると、境目から雨が浸入してしまいます。
台風など強風のあとは、棟に異変がないかチェックしましょう。
劣化したアスファルトシングル屋根のメンテナンス方法には、下記があります。
・部分的な補修
・塗装
・カバー工法
・葺き替え
以下では、各メンテナンス方法の内容やタイミングを解説します。
アスファルトシングル屋根の一部に剥がれや浮きが見つかった場合、部分的な補修を行う必要があります。
作業内容はシンプルで、劣化部分の周辺の汚れの除去と接着用セメントやタッカーを用いた固定です。
劣化が軽度であれば、補修したかどうかがわからないくらい美しい仕上がりを目指せます。
少しの浮きでも風に晒されるうちに屋根材がめくれ上がってしまう可能性があるので、早めの処置が大切です。
アスファルトシングルが色あせた場合、塗装し直すと美しさを取り戻せます。
アスファルトシングルに使用する塗料は、基本的に水性のものを選びましょう。
油性（溶剤系）の塗料を塗ると、アスファルトの成分が溶けて染み出る場合があるため、塗料選びには注意が必要です。
塗料選びに自信がない方は、専門知識をもつ業者への相談をおすすめします。
また、アスファルトシングル屋根の塗り直しは美観の維持が目的です。
屋根材の寿命を伸ばす効果はないことを覚えておきましょう。
カバー工法では、今ある屋根の上に新しい屋根を重ねて設置します。
アスファルトシングル屋根に全体的な劣化があり、なおかつ下地材に補修の必要がなければこの工法がおすすめです。
カバー工法では現存の屋根を解体しないので、廃材撤去にかかる費用や工期を大幅に抑えられます。
新しく被せる屋根は基本的に軽量の屋根材ですが、アスファルトシングル自体も軽いため同じ屋根材を選んでも問題ありません。
葺き替えとは、屋根全体を解体して下地材もまとめて新たに設置し直す作業です。
アスファルトシングルに限らず、下地材が劣化している屋根には葺き替えが必要となります。
この工法のメリットは、屋根を一新することで美観と耐用性の双方を高められる点です。
一方で既存の屋根の解体や廃材処理の工程が含まれるので、費用と工期が増大しやすくなります。
アスファルトシングル屋根について、以下の点に注意しましょう。
・施工経験のない業者が多い
・さらに軽い屋根材がある
・雪止めを設置する際は先付けにする
・屋根の表面が滑りやすい
・塗装後は必ず縁切りを行う
・施工できる屋根の勾配が決まっている
詳細を解説するので、参考にしてください。
アスファルトシングルは、日本での普及率が低い屋根材です。
そのため、施工経験のない業者は多くありません。
屋根材を固定するための釘やタッカーを使用し過ぎると、アスファルトシングルがもつ防水性が発揮できなくなる可能性もあります。
業者の技術力によって、仕上がりに差が出ることを覚えておきましょう。
施工経験のない業者は不安だと感じる方は、事前に施工経験の有無を確認すると安心です。
施工実績をホームページに掲載している業者もいるので、調べることをおすすめします。
アスファルトシングルは軽い屋根材、屋根の軽量化を目的に葺き替えを検討する方もいるでしょう。
しかし、アスファルトシングルよりさらに軽い屋根材があります。
たとえば、1平方メートルあたりの重さを比較すると、アスファルトシングルは約10～12kg、ガルバリウム鋼板のような金属屋根は約5～6kgです。
リフォーム内容や環境によっては、アスファルトシングル以外の屋根材の方が適している場合もあります。
屋根材ごとの特徴を把握して選ぶとよいでしょう。
どの屋根材が適しているか判断が難しい場合は、業者に相談すると確実です。
アスファルトシングルは、接着剤や釘を使って固定しています。
そのため、後から屋根材をめくって雪止めを設置するのが難しい場合があります。
雪止めそのものは後付けできる製品もありますが、アスファルトシングル屋根で雪止めを検討している場合は、先付けがおすすめです。
アスファルトシングルの表面に吹き付けてある石粒は、劣化によって徐々に剥げ落ちていきます。
劣化の進み具合によっては、屋根の表面が非常に滑りやすくなるため注意が必要です。
また、苔や藻、カビが生えている屋根も同様に滑りやすくなります。
アスファルトシングルは見えにくい場所に苔や藻、カビが映えている可能性があります。
できるだけ屋根に上ることは避け、専門業者に依頼すると安心です。
アスファルトシングルを塗装した場合「縁切り」という作業が必要になります。
縁切りとは、屋根材が重なっている部分に入り込んだ塗料を、乾燥後に剥がす作業を指します。
屋根材の隙間は、水はけをよくするために欠かせません。
塗料で隙間が塞がったままだと、雨漏りの原因になります。
屋根の塗装を行う際は、縁切りを行ってもらえるか業者に確認するとよいでしょう。
アスファルトシングルを施工するためには、屋根の勾配が3.5寸以上必要です。
アスファルトシングルは勾配が緩い屋根や、フラットな屋根には向きません。
勾配が緩いと水はけが悪くなり、雨漏りにつながりやすくなるからです。
また、アスファルトシングルは夏の暑さで膨張しやすく、気温が低い冬は収縮します。
膨張と収縮を繰り返すと屋根材に隙間ができ、そこから雨水が浸入するケースもあります。
そのため、基準値をクリアした屋根にしか施工できません。
自宅の屋根が3.5寸以上あるか分からない方は、業者に相談すると確実です。
アスファルトシングル屋根はこまめな点検で長持ちする
アスファルトシングル屋根を長持ちさせるために、以下のこまめな点検がおすすめです。
・定期的に業者に点検してもらう
・早めに棟部分を交換する
具体的な内容を紹介します。
屋根は日常的に状態が確認しづらい場所です。
早い段階で浮きや剥がれに気づき、必要な補修を行うためにも業者による定期点検がおすすめです。
必要に応じて接着剤で補強すれば、強い風で屋根材が飛んでしまう事態を避けることができます。
点検の目安は5年に1度です。
棟部分は雨風の影響を受けて劣化しやすく、強風で飛ばされやすい部位です。
耐用年数を迎える前に、早めの交換をおすすめします。
交換の目安は15年に1度です。
アスファルトシングル屋根の特徴を知って施工を依頼しよう
アスファルトシングルは、表面に吹き付けた砂粒とさまざまな形状の屋根に応じて加工できる柔軟さが特徴的な屋根材です。
材料費が比較的安く運搬や施工がしやすいので工事費用を効率的に抑えられます。
ただし耐風性が低く、強風に晒されるとめくれ上がったり千切れたりしやすい点がデメリットです。
さらに国内での普及率が低い屋根材なので、信頼できる業者を探しにくい傾向にあります。
アスファルトシングル屋根の施工を検討している場合、実績の有無やスタッフの技術力を意識して良質な業者を選びましょう。
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