茅葺き屋根の葺き替え工事を行うメリット・デメリットと注意点を解説
茅葺き屋根を葺き替え工事で維持するメリットやデメリットを知りたい方もいるのではないでしょうか。
ススキなどの植物を材料として屋根に葺く、古くから伝わる茅葺き屋根は、ユニークな外見から観光地で印象に残りやすい伝統的な屋根です。
日本での起源は縄文時代からとされており、世界中でも古くから利用されている建築技術になります。
当記事では茅葺き屋根を葺き替え工事する恩恵や事前に押さえておきたい注意点などを紹介していきます。
茅葺き屋根の葺き替え頻度の目安は15〜20年程度と、耐久性が高い屋根です。
毎日内部の囲炉裏を利用し立ちこめた煙が茅に付着して、防虫効果が発揮されます。
現代でも一部の地域では住居やテナントとして利用されるなど、雨を防ぐ機能性は申し分ありません。
内部まで水が入らず屋根としての役割を十分に果たす構造から、昔ながらの知恵として利用されてきました。
仕組み自体は簡単な構造にもかかわらず高い機能性を発揮するという特徴も、世界中で古くから茅葺き屋根が使用されてきた理由の1つです。
屋根材を吹き替えで維持するメリットは以下の通りです。
・防水性、耐久性が高い
・デザイン性が高く観光資源になる
・通気性が高い
・吸音性が高い
・廃材は肥料にできるため環境にやさしい
順番に解説していきます。
現代で利用されている屋根材と比較すると心許ない見た目の茅葺き屋根ですが、防水性と耐久性は高い屋根になります。
茅葺屋根は急勾配と茅を束にして得られる導水効果と呼ばれる現象により、茅葺き屋根は雨水が表面だけを流れて外部に排水されます。
住宅を湿気による腐食から守り続けるためには、外部から浸入する雨水を長年防ぎ続ける仕組みが必要です。
導水効果に加えて急勾配の屋根を採用する「合掌造り」にして積雪による重量も回避できるため、雪が多い地域でも古くから茅葺き屋根が利用されてきました。
瓦や金属が開発される前でも機能性が高い屋根を実現できる貴重な手段である点も、古くから利用されてきた理由の1つです。
茅葺き屋根は昔話で出てくるようなユニークな外観から、デザイン性が高く観光資源として現代でも利用されています。
国内で茅葺屋根が利用されている代表的な観光資源は以下の通りです。
・白川郷(岐阜県)
・五箇山(富山県)
・大内宿(福島県)
・美山北集落(京都府)
・伊勢神宮(三重県)
古くからの歴史や文化を後世に伝える持続可能な観光への取り組みに貢献できるのも茅葺き屋根を維持するメリットです。
茅葺き屋根は分厚い屋根が空気の層を作る構造から、夏は涼しく冬は暖かい室内を実現できる機能性を持ちます。
現代社会のように中で煙が充満しないため、中で囲炉裏を使用しても問題がない点も茅葺き屋根の特徴です。
茅葺き屋根の素材は腐りやすいため、囲炉裏で使用する炭といった燃料から発する煙で燻すことで、防虫性・耐久性が更に高まります。
ガスや電気が無い時代でも、室内で火を取り扱える合理的な作りも茅葺き屋根のメリットです。
茅葺き屋根は吸音性が高く、静かな室内を実現できるのも大きな特徴です。
吸音性が高い理由は、厚みのある屋根が音を吸収する役割を担うためです。
金属屋根のように雨音が室内に響く屋根と異なり、大雨でも室内が静かなのも茅葺き屋根の特徴になります。
茅葺き屋根の葺き替えで発生する廃材は、瓦や金属と異なり肥料として利用可能です。
自分で農場を持っている方は、肥料として利用し処分費用を安価に済ませられます。
屋根材の解体で発生する廃材の処分は、運搬や焼却などで大量の温室効果ガスが発生します。
肥料として破棄できる茅葺き屋根は、環境にも優しくSDGsに貢献できるのもメリットの1つです。
茅葺き屋根は数々のメリットを持つ反面、注意したい以下のデメリットを抱えています。
・燃えやすい
・台風に弱い
それぞれ解説していきます。
茅葺き屋根は、現代で主用の瓦屋根や金属屋根と異なり簡単に燃えます。
すべて可燃性の材料で組み合わせて作るうえに、通気性が高く燃焼しやすい条件が揃っていることが燃えやすい理由です。
材料に使用する茅はしっかりと乾燥させたものを利用するため、茅葺き屋根の住宅が密集している地域では大火事にも繋がります。
1度燃えてしまうと高確率で全焼してしまう点も、茅葺き屋根の注意したいデメリットです。
茅葺き屋根の材料となる茅は非常に軽く、瓦や金属屋根のように釘で固定できないため強風で簡単に飛ばされてしまいます。
台風被害により、屋根材が吹き飛ばされてしまうケースも珍しくありません。
年々深刻化する台風被害に遭遇しやすい点も、茅葺き屋根の大きなデメリットです。
茅葺き屋根を葺き替え工事以外でメンテナンスする方法
自然素材を利用してつくる茅葺き屋根は、適切なメンテナンスが必要です。
茅葺き屋根のメンテナンス例は、以下の通りです。
・丸葺き：全面葺き替える工事
・分割葺き：屋根を分割して行う葺き替え工事
・差し葺き：劣化がひどい部分に新たな茅を差し込み補修する工事
室内で煙の出る火を取り扱わない物件であれば、防虫効果のある煙が不足し劣化が早くなります。
茅葺き屋根の機能性を十分に発揮するためには、定期的なメンテナンスを施す必要がある点にも十分注意しましょう。
茅葺き屋根の葺き替えを依頼するうえでチェックしておきたい注意点は、以下の通りです。
・素材により耐用年数が短いものがある
・施工できる業者が限られている
順番に解説していきます。
茅葺き屋根という名前の由来である「茅」という植物はありません。
ススキ・稲・小麦などを材料として利用しており、素材によって耐用年数が短いものがあります。
特に稲や小麦などを利用した茅葺き屋根は、耐用年数も非常に短い点に注意が必要です。
逆に茅葺き屋根は、耐用年数が長いです。
茅葺き屋根は、使用する素材によって耐用年数が左右される点も事前に覚えておきましょう。
茅葺き屋根は施工できる職人は限られています。
茅葺き屋根は地域住民が力を併せて手伝い合う、「結い」や「合力」と呼ばれる村の風習で成り立っていました。
現代社会では廃れてしまった風習のため、維持が難しくなります。
結果として茅葺き屋根は修理費用が高額で、維持するのが難しい点にも注意が必要です。
茅葺き屋根が現代では非常に少数な理由は、以下の通りです。
・高い維持費用がかかる
・建築基準法で新築を建造できない
・現代社会と合っていない
1つずつ見ていきましょう。
茅葺き屋根は工事できる業者が少ないため、通常の屋根工事より人件費が高額です。
通常の屋根より維持費が高額になることから、経済的に維持できず茅葺き屋根の住宅が減少しているといった理由が挙げられます。
少子高齢化の影響も加わって技術者は減少しており、茅葺き屋根の葺き替え技術を持つ職人は貴重です。
茅葺き屋根は建築基準法により、新築に導入できない屋根です。
茅葺き屋根は非常に燃えやすいため、火事を防ぐ目的として建築基準法で新築の導入が禁止されています。
茅葺き屋根の住宅を新たに増やせない点も、年々茅葺き屋根が減少している大きな理由の1つです。
茅葺き屋根は、集落の村人同士の協力関係で実現している屋根です。
昔の風習が廃れた現代では、皆で協力して茅葺き屋根を修理できません。
近所に廃材を処分できる畑がない、もしくは遠いため、廃材を簡単に処分できない側面も抱えています。
茅葺き屋根は複数の要因から現代社会と合っていないという特徴も、徐々に減少している理由です。
茅葺き屋根で葺き替えを行うメリット・デメリットを把握して施工を検討しよう
昔ながらの茅葺き屋根を葺き替え工事するメリットやデメリットを解説しました。
茅葺き屋根は昔ながらの美しい景観が大きな特徴です。
一方で火災に弱く、新築できない屋根である点が残念なポイントです。
葺き替え工事の実施を検討している際には、本記事で紹介した内容をもとに慎重に対応しましょう。
